洋子:それは1stアルバムの時から言えることなんですけど、自分の中にある根本のロックというのは、必ずしもアップなもの、疾走感のあるものだけではないんです。 |
――それは、精神的なものなんですか?
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洋子:精神的なものもそうなんですけど、“打ち込みは絶対にしない”“生のものである”っていうことが、私が思うロックです。 |
――サウンドは、シンプルなバンド・サウンドですよね。
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洋子:シンプルで聴き易く、王道で分かり易いスタイルであること、そして時間が短いことを意識しました。自分自身が他のバンドの曲を聴いた時に長い曲が苦手なので、3分ちょっとでリスナーにある程度の余韻を残してもらえるようにしてあるんです。 |
――ヴォーカルは、曲によって表情が変わりますよね。それは意識的に使い分けされているんですか?
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洋子:そうですね。曲によって歌詞のテンションが全然違うので、“色んな矢沢洋子という人間の表情を見せたい”っていう気持ちが強かったんです。たとえばスタジオに入って、その日のテンションで“じゃあ今日はアップテンポのこの曲を歌おう”っていう感じに決めることがほとんどだったので、それで声色や歌い方が変わっているんです。 |
――今回のアルバムでは、色々な作曲家さんが曲を提供してくれていますね。中でも井上ジョーさんは、前からのお知り合いと伺いましたが。
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洋子:ジョー君とはアメリカの高校の時に同級生で、去年ジョー君のアルバムでフィーチャリングで参加させてもらったんです。西海岸を彷彿させるサウンドが今回のアルバムで欲しかったので、ジョー君にオーダーして曲を書いてもらいました。歌詞は、まるでカルフォルニアの方でパーティーをしながらみんなで騒いでる感じが出せたと思います。 |
――特にサビは、メロディーのノリを活かした言葉を使われていますね。
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洋子:そうですね。「アドレナリン」は、内容よりも誰が聴いてもすんなり耳に入ってくる歌詞にした方がいいと思ったので、サビに“yeah!”“wow!”“ah!”と割と洋楽にありがちな形にしてみました。 |
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――「SOS」の歌詞はインパクトがありますね。この曲を1曲目に持ってきた理由は?
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洋子:「SOS」は2月後半にレコーディングが終わっていたんです。1曲目に持ってきたのは、「SOS」のイントロに“これから2ndアルバムが始まるぞ”という勢いがあることが、一番の理由です。 |
――「羅針盤」は、映画「少女たちの羅針盤」の主題歌ですが、映画のために書き下ろしされたんですよね?
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洋子:はい。お話を頂いた時には映画はほとんど出来ていて、“映画のイメージや雰囲気を壊してはいけない”っていうことを頭に入れながら、作りました。監督の作品に対する思い入れが強かったので、一緒にレコーディング当日ギリギリまで歌詞の打ち合わせをして作ったので、アルバムの中でも一番時間がかかり、強く記憶に残った楽曲です。 |
――歌詞では“ワタシタチ”をカタカナで表記してありますよね。それはなぜですか?
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洋子:映画にはメインで4人の女の子が出てくるんですけど、漢字にしちゃうと4人に限定される気がしたんです。カタカナにすることで、リスナーが自分の事だと思えると思ったし、映画の中の4人の事だとも思えるので、カタカナで表現しました。 |
洋子:簡単に言うと、ロックを歌う時は“自分はステージに立つカッコイイ女だ”ってマインドコントロールして歌うのに対して、バラードを歌う時はストーリーテラーのように、物語を人に聞かせて読むような感じです。そういった2面性を聴いてくれる人には楽しんでもらいたいですね。 |
――アルバムのリード曲でもある「Give Me!!!」は、矢沢さんらしいカッコイイ楽曲ですね。
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洋子:“「Give Me!!!」は、プリプロでスタジオに入って歌った時から、凄く嬉しい気持ちにさせてくれる曲で、初めて出来上がった曲を聴いた時も、“凄くカッコイイ!!”って、心が躍った1曲です。なので、「Give Me!!!」は、とても自分らしい曲に仕上がってると思います。 |
――“「最低」って意外とほめ言葉になるかも”っていう歌詞が印象的でしたが、そのフレーズは、どういう思いで書かれたんですか?
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洋子:“そのフレーズに対して、凄く反応が多いんですよ(笑)。単純に自分のまわりって飲んだくればっかりで、“もう最低!”みたいな感じなんだけど、どんなことにおいても“最”が付くのは、凄い事なんだな、と思うんです。会話の中で“あいつ最低だよね”って言われる人って、意外と愛されてる人だと思うし(笑)。だから、「Give Me!!!」の勢いのあるメロディーに乗せて伝えたいなと思ったんです(笑)。 |
――そういう意味では、「too late」も印象的なフレーズが多いですよね。たとえば“隣の芝生なんて みんなピンクに塗ればいい”とか。
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洋子:“私は普段、寝る前に色々なことを考えるんです。「too late」は、私がやっていたユニットが解散して、名前を本名に変えた転機となる時期に書いたので、“過去に捉われずに行こう!”という思いを、ビシビシと伝えられる1曲だと思います。 |
――歌詞を書くということは、矢沢洋子さんにとってどのようなものですか?
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洋子:以前は他の方に書いてもらったりもしたんですが、自分で書いた方がより歌いやすいので、自分らしく歌うための手段ですね。 |
――英語もよく使われていますが、英語に対してはどう思っているんですか?
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洋子:たとえば「Give Me!!!」だと、最初にサビの英語の部分が出てきたんです。今は結構英語を忘れてしまったんですが、それでも英語がパッと出てくるのは、その英語が簡単で分かり易く、自分の中に残っているものだからだと思うんです。だから、普段の生活で英語とかけ離れたところにいる人でも、簡単に口ずさめるし、耳に入ってくると思います。 |
――詞の世界観は独特なものを感じます。歌詞の面で影響を受けたアーティストはいるんですか?
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洋子:女性だと“GO!GO!7188”のアッコさんです。“分かる!”って思える歌詞が多いんですよね。男性だと“THE COLLECTORS”の加藤ひさしさんです。自分は女だから“女はこんなに考えてるので、どうして男は適当なの!”って思うことが多いんですけど、“THE COLLECTORS”のラブソングを聴くと、“男の人も実は色々考えてるんだな”って感じさせてくれるんです(笑)。 |
――曲を聴く時、歌詞は重視されているんですか?
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洋子:私は基本的にメロディーから入って、歌詞を読むことが多いです。“GO!GO!7188”に関しては、それこそ歌ネットで歌詞を検索して、チェックしたりします。歌ネットは、“あのアーティストさんの歌詞ってどんな歌詞だったっけ?”っていう時や、周りから“あのアーティストの歌詞を見てごらんなさい!”って言われて使うことが多いです。 |
――今後、挑戦していきたい事はありますか?
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洋子:私は先過ぎる夢は持たない主義なので、向こう三ヶ月のことを頑張ろうと思っているんです。今は、月4、5本のライブをやっているんですけど、より色んな場所でライブが出来たらいいなと思いますね。 |
――それでは、最後に「歌ネット」を見ている人にメッセージをください。
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洋子:歌詞って、書く人が100人いれば100通りの歌詞があると思うし、書いてる人にとっては凄く考えを重ねて、出来上がったものなので、どこかしらで共感してもらえたら嬉しいです。もし共感した部分があったら、どこかで直接教えていただけたらと思います。 |