――メジャーデビューから7年、自身初となるベストアルバムがいよいよリリースされますね。
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奥:前作「good-bye」を制作している時から、自分で“ベストを出したいな”と思っていました。選曲や曲順、アルバムのイメージまで自分の思うようにやらせてもらえたので、とても満足しています。 |
――自分で出そうと思っていたのは、意外ですね。
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奥:“ここ数年、ネットなどで私のシングル曲じゃない曲が話題になったり、若い世代の人がライブに来てくれるようになったりと、変化を感じたんです。だけど頂く声には、“いつもYouTubeで聴いてます”みたいなメッセージが多くて(笑)。CDじゃないのがちょっと切なくて、“人気曲を集めたベストアルバムを作ったら、手に取ってもらえるのかな”って思ったのが一番のきっかけです。 |
――今回のベストは、ファン投票を元に自ら選曲されたんですよね。 |
奥:ファン投票については、実際、どんな曲が人気なのかを知りたくて、実施したんですけど、自分が入れたかった曲とほとんど一緒でしたね。ベストには、ランキングの曲をそのまま入れた訳じゃなくて、自分の中で気に入っている曲や自分の歴史を振り返った時に節目となる曲などを追加して選曲していきました。 |
――ファン投票では、どんな曲が人気だったのですか? |
奥:「恋」と「初恋」は同率1位で、そのあとが「楔」でした。「楔」はインディーズの曲なので、今回は入ってないんですよ。あとは、「変わらないもの」「ガーネット」も上位でしたね。 |
――今回のベストには、シングル曲でも入ってない曲がありますよね。
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――“多分、そうだろうな”って思っていました(笑)。
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奥:(笑)。恋のうたは、ネットや口コミで人気が出た曲が自然と集まりましたね。逆に愛のうたは、デビュー曲だったり、ファンの人へのメッセージソングだったり、自分自身の活動とリンクした曲が多くですね。 |
――再録曲も二曲収録されていますね。
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奥:「恋」については、細かい話になっちゃうんですけど、“好きなのに”っていうフレーズがあって、原曲では普通に言っているんですけど、ライブをやっていくにつれて、その部分を溜めて歌うようになっていったんですね。それで今、原曲を聴くと何か違和感を感じるようになったので、新たに録音し直したんです。 |
――では、もう一曲の「元気でいてね」は?
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奥:「元気でいてね」は、この間、全国ツアーのアンコールでアカペラで歌ったんですけど、その感じがすごくしっくりきたんです。だからと言って、ベストにアカペラで入れるのは自分本位なので、そのイメージに近いアコースティックで録り直しました。 |
――新曲も一曲収録されていますね。
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奥:新曲の「愛を見つけた場所」は、デビュー曲「やさしい花」のアンサーソングとなる曲で、「やさしい花」の世界から思いを繋げて作った曲ですね。 |
――スペシャル盤、BOX盤には、未発表曲も収録されていますよね。
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奥:未発表曲に収録されている「それぞれ」という曲は、以前、歌ネットさんで「笑って笑って」の企画の際に、ユーザーの皆さんから“アナタが励まされたコトバ”を募集して、それを元に作った曲なんです。だから、ぜひ歌詞に注目して聴いてほしいです。 |
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――今回のアルバムに収録されている曲で、転機となった曲はありますか?
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奥:やっぱり「ガーネット」ですかね。この曲がなかったら、今の奥華子は全然違っていたと思いますね。 |
――では、お気に入りの曲は?
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奥:恋のうたに入っている曲は、切ない曲や泣ける曲と言われている曲がほとんどで、奥華子に求められていると思うものを集めた一枚なんです。特に「初恋」は究極の失恋ソングを作ろうと思って作った曲で、聴いてくれている人の反応があって出来た曲なので、思い出深い曲ですね。 |
――愛のうたでは、いかがですか?
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奥:路上で活動していた私を道行く人が見つけてくれて、その感謝の思いを歌った「タイムカード」や、九州で廃校になる学校の子供たちが歌ってくれて、自分が作った曲を人が歌ってくれる喜びを知った「笑って笑って」、あと、やっぱりあの震災がきっかけで出来た「君の笑顔」も外せないですね。 |
――奥華子さんといえば、“失恋ソングの女王”と呼ばれていますが、ご自身ではどう思っているのですか?
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奥:そういう風に活字で示してもらえたことによって、自分でもそういう気になってくるので、それを意識して作った曲はたくさんありますね(笑)。だから、“どれだけ失恋しているんですか?”ってよく言われます(笑)。 |
――では、奥華子さんにとって失恋ソングとは?
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奥:あの震災もそうでしたけど、当たり前と思っていたささやかな日常が、当たり前ではなかったということに、失ってはじめて気付いたところがありました。恋愛もまさにそうで、失恋することで色々な大切なことに気付かされるなと思います。 |
――確かにそうですね。
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奥:失恋から学ぶことも多いし、人間的にも成長できる。だから、失恋ソングは、幸せを歌うことでもあると思うんです。失恋ソングを作る時は、幸せだった時のことを思い出すから、“何が幸せなんだろう?”っていうことも考える機会でもあると思うんです。 |
――幸せって難しいですね。
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奥:“人生とは何ですか?”って考えた時に、“暇つぶし”っていう言葉が私にはピンと来るんです。生きることは色々大変だし“幸せ”に気付きにくいけど、“退屈だな”って思えること自体が幸せなんだと思うんですよね。 |
――「あなたに好きと言われたい」の中で、“人は守りたいものだけに 本当の嘘をつけるのかな”というフレーズがありますが、奥華子さんの歌詞を語る上で重要なフレーズじゃないかなと思いました。
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奥:そのフレーズを取り上げてくれたことは、嬉しいですね。その通りで、“自分の孤独からの解放”を恋愛とリンクさせながら曲を書いているので、報われない恋の曲が多いのも、そこに理由があるんだと思いますね。 |
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――歌詞は、実体験で書かれているのですか?
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奥:自分が経験したことが全部歌詞になってはいるんですけど、それを伝えるためにシチュエーションや物語を作っている感じです。たとえば、“人は守りたいものだけに 本当の嘘をつけるのかな”っていうテーマとなるフレーズが出てきたら、それを上手く伝えるために、シチュエーションをフィクションで作る。だいたいそういう感じですね。 |
――これだけ曲を書いていると、シーン設定に悩むことも多いんじゃないですか? |
奥:そうですね。自分の経験だけだと偏ってしまうので、そういう意味では、ファンの方からいただくメールや手紙がヒントになることもあるし、エッセイなどの読み物からヒントをもらうことも多いですね。 |
――では、曲作りをする上で大切にしていることは? |
奥:最近は、特に“イメージが大事だな”って思っていて、曲を作る時は、自分の中で絵を描くようにイメージするんです。それが浮かんでこないと曲はできないですね。 |
――奥華子さんのファン層って、どんな世代の方が多いのですか? |
――それに対して、どうアドバイスされるんですか?
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奥:私自身、言わないままで終わったり、後悔するのがすごく嫌なので、“言ってしまえ!”って言いますね(笑)。 |
――(笑)。でも、周りの目だったり、環境が邪魔をしてなかなか言えない人も多いと思うんですよ。
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奥:そういう理由で言えないのは、結局そこまでの思いだと思うんですよ。本当に好きだったら、どんな状況でもちゃんと伝えられると思うんですよね。かなり勇気が必要ですけどね、(笑)。 |
――確かにそうですね。奥華子さんは、どういう音楽を作っていきたいと思っているのですか?
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奥:最終的な夢は教科書に載るような、歌い継がれる曲が書きたいと思っています。 |
――そんな奥華子さんから見て、“この曲はすごい!”と思う曲は?
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奥:私はマッキー(槇原敬之)さんが大好きで、最近のアルバムで「風は名前を名乗らずに」っていう曲があるんですけど、本当に感動したんです。“なんて優しいんだろう”って。 |
――それでは、最後に「歌ネット」を見ている人にメッセージをください。
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奥:歌ネットさんで私のことを知ってくれた人も多いと思うので、歌詞に注目してもらえて嬉しいです。私も歌ネットを使っているんですけど、色んな歌詞が見れてとても勉強になります。ベストアルバムは、切ない曲から聴いてもらいたい曲が全部入っているので、ぜひ聴いてみて欲しいです。 |