――今、最も歌詞が見られているアーティストと言える西野カナさんですが、これだけ歌詞が見られてることについては、どう思いますか?
|
西野:本当に嬉しいです。歌詞は自分が手掛けている中で一番こだわっている分、苦労しているところでもあるので、歌詞カードだけじゃなく、こういうサイトでも見てもらえるのは、やっぱり嬉しいですね。 |
――これだけ共感される歌詞を書けるのは、どうしてだと思いますか?
|
西野:“色んな人に当てはまってほしい”っていう気持ちは常にあります。自分と重なる部分があった時に癒されることってあるじゃないですか。だから、たとえ詞的じゃなくても、嘘がないように、格好つけないように書いているので、それが響いてくれていたらいいなと思っています。 |
――もともと音楽を聴く時に、歌詞に対する意識は高かったのですか? |
西野:昔から洋楽が好きで、どちらかというと音を聴いてる方だったので、歌詞を気にして聴いたことってそんなになかったんです。デビューして自分で詞を書くようになって、“言葉は大事なんだな”って気付きました。ライブをはじめ、いつも歌詞カードを見ながら聴いてくれる訳じゃないから、滑舌も気にするようになったし、テレビで流れる十数秒の中で、みんなの何かに留まってほしいと思うようになって、ますます言葉を大事にするようになりました。 |
――いよいよ4枚目となるアルバム「Love Place」がリリースになりますね。アルバムのタイトルに込めた思いを教えてください。 |
西野:去年は全国ホールツアー、そして今年はファンクラブツアーを通して、ファンのみんなと交流する機会があって、すごく繋がりを感じたんです。交流する中で、“もっとみんなの為になる曲を作りたい”っていう気持ちが生まれてきました。だから、幸せな気持ちになれる曲や背中を押せる曲がすごく増えたと思うし、“一つの拠り所としてこのアルバムを聴いてほしい”っていう思いを込めて、「Love Place」というタイトルを付けました。 |
――愛を周りに与える精神的成長と余裕を感じさせるアルバムになりましたね。
|
――確かに「Best Friend」と「私たち」を比べてみると、「Best Friend」では、いつも助けられてばかりだった自分が、「私たち」では、「君以上に君のことを知っているのは私だけ」とあるように対等の関係になっていますね。
|
西野:人に与える余裕ができたっていうと大き過ぎるかもしれないですけど、それだけ誰かに対する気持ちが大きくなったからだと思うんですよね。それは友達に対してもそうだし、いつも聴いてくれているファンのみんなに対してもそう思いますね。 |
――曲に対して、反響はいかがでしたか?
|
西野:“いつまでもこういう関係でいたいと思った”とか“こういう関係に憧れる”とか、色んな感想をもらいました。私は今23歳で、自分ではちょうど子供と大人の間みたいなイメージなんです。未来に対して希望を持てる歳でもあれば、過ぎてしまった過去に後悔することもできる。すごく微妙な年齢の感情も表現しているんですけど、そこに注目してくれた人もいましたね。 |
――確かに、“オトナには分からない”的な歌詞がアルバムのところどころに出てきますね。
|
西野:30歳になっても40歳になっても、それより長く生きている人が上にいる限りは、結局子供だと思うんですよ。いつまででも、“まだまだ若いんだから”って言われ続ける。だから、子供心を忘れない人はずっと忘れないと思うし、まだまだ自分はやれるっていう人は、いつまででも挑戦し続けると思いますね。 |
|
――「My Place」でイメージしたのは、やっぱり地元の三重ですか?
|
西野:そうですね。私は東海エリア出身なので、名古屋テレビの方から“地元を応援するテーマソングを作りませんか?”ってお誘いがあったんです。今年の正月に地元に帰った時のことを思いだしながら作ったんですけど、地元にある電車も登場するように、実際に帰った道順をそのまま書いたんです(笑)。 |
――じゃあ、曲のまま辿っていけば、実家に辿り着きますかね?(笑)。
|
西野:駅までは着けるかもしれないですね(笑)。この曲は、うちの地元を具体的に書いてはいるけど、たとえ電車は赤じゃないにしても、地方出身の人は同じようなことを感じると思うし、ホッとする帰りたい場所っていうのは、誰にでもあると思うので、どんな人にも当てはまると思います。 |
――東京で生活するようになって、郷土愛は強くなりましたか?
|
西野:そうですね。東京もすごく刺激的でそれはそれで良さはあるんですけど、でもやっぱりずっと長い間いた場所とは、空気が違うというか…。田舎ってビルが建ったり、逆に無くなったりしていっても、空気と空、そこに住む人の感じは絶対に変わらないと思うんですよね。 |
――確かにそうですね。でも地元に帰る時間はあまりないですよね?
|
西野:名古屋は大学があったこともあって友達もいっぱいいるし、仕事で行く機会も多いので、よく行くんですけど、実家の三重は、“家族だけだし、まぁ、いっか”みたいな感じになっちゃって(笑)。今年の正月に、何年かぶりにおばあちゃん家にも行ったんですけど、それは東京での生活があったからかもしれないですね。 |
――「Be Strong」は、失恋を乗り越える決意を歌っていますが、ご自身が失恋から乗り切る方法や今そういう状況の人にアドバイスをするとしたら?
|
西野:失恋した時って全部失ったかのような気持ちになったりするけど、そんな時に残っているものに気付いた時、意外とそれが一番大事だったりするんですよね。離れたから気付くのと同じで、失ったから気付く。だから“悪い事だけじゃなかったんだ”って思える時があると思うので、それを信じるしかないと思うんですよね。今までだってそうやって何かを乗り越えてきたんだから。 |
――「SAKURA, I love you?」みたいに無理やりでも新しい恋人を作る方法もあると思いますが?
|
西野:それは、あまり良くはないですね(笑)。でも、実際にあったからそういう歌があるんですけど、でも、あるとこんな困ったことになるっていう(笑)。 |
西野:恋する気持ちや切ない片思いはいっぱい書いてきたけど、でも切ない事だけじゃないよね、っていうことは、ずっと言いたかったことではあるんです。自分が恋をした時に試した乙女心みたいなものをいっぱい詰め込んでポジティブに作ったので、恋がしたくなったり、片思いしてる人の背中を押せれば嬉しいですね。 |
――ビジュアルもチアリーダーの格好をして、今までとは違うイメージでしたね。
|
西野:毎回ジャケットのイメージは、曲と照らし合わせて決めているんです。今年の夏にネオンカラーが各ブランドから出るっていう情報をゲットしたんですけど、「GO FOR IT !!」の曲の設定は、高校生の教室の中だけで起きてるような世界観をイメージしていたので、セレクトするブランドを年齢層が若いブランドからリースしてもらったり、とにかく若い年齢をイメージしたものを選びました。 |
――逆に「Love Place」のジャケットは、落ち着いた大人なイメージに仕上がっていますね。
|
西野:“一歩前に踏み出す”“成長”“余裕”をテーマにしていて、このアルバムを手にした時に“あっ、西野カナ、ちょっと変わった”っていうのを思われるように、ちょっと大人めなものに挑戦しています。今年の秋は、こういうクラシカルなものが流行るので、背景も洋服もそういうものから選んでいます。 |
――ちなみに好きな色って何色なんですか?
|
西野:エメラルドグリーンみたいな緑が好きです。いつからかは覚えてないんですけど、気付いたら緑が一番好きでした。周りには、ピンクが好きなイメージがあるみたいなんですけど(笑)。 |
――アルバムで特に注目してもらいたいところはどこですか?
|
西野:シングルのカップリングでは、西野カナのパブリックイメージじゃないものを意外と取り入れたりしているんです。同じようにパブリックイメージではない曲を聴いてもらえるチャンスがアルバムだと思うので、そこにも注目して楽しんでもらいたいです。あと、やっぱりテーマがそれぞれ本当に生活になじむものばっかりなので、きっとみんなの周りにいる人を当てはめながら聴いてもらえると、その人のことがもっと好きになったり、大事にしたくなると思います。 |
|
――歌詞は普段どのように書かれているのですか?
|
西野:普段、歌詞は全く書いてなくて、制作日って決めた日に、“アルバムの何曲目作ります”みたいな感じで、選んだ曲をゼロから作っていきます。ネタ帳も持ってないし、普段は歌詞に対しては考えていないので、毎回苦労しています(笑)。 |
――前回インタビューさせていただいたときには、キッチンで書いていましたよね。 |
西野:以前は、紙に書いていたので(笑)。最近はパソコンを使っているので、ソファーに座って書いたり、椅子に座って書いたり、とにかく家の中をウロウロしています(笑)。 |
――歌詞を書く上で、一番大切にしていることは? |
西野:一人で書いてると自分だけの世界観になったり、独りよがりになってしまうので、色んな人に意見を聞くようにしてます。第一稿みたいに作ったものを “これどう思う?”って聞いたり、作る前にもテーマを片思いって決めたら、片思い中の友達に電話したりもしますね。 |
――これまでで特に歌詞に時間がかかった曲や逆にすぐ出来た曲って何ですか? |
西野:今回のアルバムで言えば、「Be Strong」はすごい時間が掛かりましたね。何が一番大事なのかをすごい悩んだんですよ。強くなりたいという気持ちが大事なのか、強くなるためにどうするかが大事なのか、って。加えて、大事なメロディーも沢山あったので、そのパズルがすごく難しかったです。逆に「*Prologue* ~Welcome~」と「*Epilogue* ~Love Place~」はすんなり書けましたね。一日で両方書けました。 |
――すぐ出来る時と時間がかかる時の違いって、何ですか? |
西野:やっぱりイメージが見えてるか見えてないかだと思います。模索しながら作るのが当たり前になっちゃっているので、正直時間が掛からない曲ってあんまり無くて。言いたいことがバシッと決まっている時は、めちゃくちゃ速いんですけどね(笑)。 |
――喉のケアはされているのですか?
|
西野:何もしてないんですよ。気にしないことが一番だと思っているので。風邪ひくのでもそうだと思うんですけど、“気にしないのが一番”っていうのが、モットーなんです。だから喉が潰れることは、ほとんどないですね。ツアーで名古屋に行った時なんて、ライブで二時間歌って、終わった後に友達とカラオケに行ったりもしますからね(笑)。 |
――(笑)。最近は、どんな音楽を聴いているのですか?
|
西野:流行りの洋楽は聴きますし、最近だとニッキー・ミナージュも好きです。海外のアーティストのミュージックビデオも好きで、そこからイメージをいただくこともあります。 |
――日本のアーティストさんでは?
|
西野:トータス松本さんとSuperflyさんが曲を出されていますけど、テレビ番組でご一緒されていただく機会が多くて、ラッキーなことに生で3回も聴かせていただいて、すごく迫力があってカッコ良かったです。 |
――では、憧れの人や尊敬してる人は?
|
西野:日本のアーティストさんで言えば、MINMIさん、海外だったらジェニファー・ロペスが好きですね。個人的にはおばあちゃんを尊敬してるし、もちろんお母さんも。共通して言えるのは、強く可愛く優しい女性っていうのはあるかな。あとみんな超ポジティブで、自分を持っててハッピーオーラが出てるんですよ。 |
――可愛さって言うのは、内面ですか?それとも外見ですか?
|
西野:もちろん内面もそうですし、美容やビジュアルのことをずっと気にしてられる人もすごく素敵ですね。たとえばMINMIさんで言えば、“お子さんも三人いるのに、あのキュートさって何なんだろう?”っていつも思うんです。ステージも昔からめちゃくちゃパワフルなのに、キュンってする瞬間がある。ドキドキさせる感じが可愛いですよね。 |
――今、一番楽しいことやマイブームはありますか?
|
西野:部屋のインテリアがすごく好きで、模様替えと部屋の片づけはしょっちゅうやってます。大学の時から一人暮らしはしてるんですけど、どうしても大学の時は、レポートやプリントなどで散らかってて全然こだわれなかったんです。それが無くなった分、オシャレにこだわる余裕が出来たので、今はいつも家を綺麗にしてます(笑)。 |
――プロデュースされた香水が秋に発売になりますね。
|
西野:香水を作ることは高校生の時からの夢だったんです。ジェニファー・ロペスとか自分の憧れる人たちも香水を出していたので。匂いって音楽と同じで記憶に残るものだし、その人を表現するものでもあるので、すごく共通してるものだと思いますね。やっぱり西野カナと言えば恋愛っていうイメージがあるから、恋のお守りになるような、女の子を応援できるようなものになれば嬉しいですね。 |
――一瞬で記憶を甦らせる匂いの力ってすごいですもんね。
|
西野:私自身、好きな人がつけていた香水と同じ匂いを嗅ぎたくて、その香水を一生懸命探したこともあるし、好かれたくていい匂の香水を探したりもしましたからね(笑)。香水は苦手な人もいるので、なるべく人に嫌がられないようないい匂いにしようと思って作ったんですけど、すごく淡泊なものができちゃって、これじゃ全然印象にも残らないと思ったので、バニラの匂いを足したんです。人の記憶に残っていってくれるものになれば嬉しいです。 |
――それでは、最後に「歌ネット」を見ている人にメッセージをください。
|
西野:いつも歌詞を見ていただいてありがとうございます。今回のアルバムは、色んなフレーズがあるので、どこか一箇所でもみんなと重なればいいなと思っています。みんなの大事なものがもっと大事になったり、もっと好きになれますように、との思いを込めて作ったので、ぜひ自分と照らし合わせて聴いてもらえると嬉しいです。 |