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今回、ベストアルバムをリリースすることになった経緯を教えてください。 |
水野 |
ずっと前から“タイミングがあれば出したい”と思っていました。今回、何か特別なことがあった訳ではないんですけど、全県ツアーが終わって、全国の皆さんに一通りの挨拶が済んだので、今までの僕らの全体像を知ってもらうには今がちょうど良いのかなと思い、リリースすることになりました。 |
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いわゆるシングルベストではないですよね。 |
水野 |
シングルベストっていうイメージは最初からなかったです。ただこんなに全時代に渡って曲を選ぶことになるとは思わなかったですね。 |
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じゃあ2枚組っていうことも途中から? |
山下 |
これまで19枚のシングルと4枚のアルバムを出していたので、1枚にするのか、2枚にするのか、それとも3枚にするのか、みたいな話をしました(笑)。“1枚では収まりきらない”とは思っていたので、一番親切で分かりやすいのが2枚組かなって。 |
吉岡 |
出し惜しみしないで聴いてもらいたかったので、ディスク1、ディスク2に分けて曲を決めたんですけど、とにかくこれまでに出した曲が多かったので、“何を入れるか”より“何を外すか”に悩みました。 |
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最初の「SAKURA」と最後の「帰りたくなったよ」は、“順当な曲順だな”と思いますよ。 |
山下 |
おっしゃる通りで、1枚目は「SAKURA」で始まって、「コイスルオトメ」で終わり、2枚目は「気まぐれロマンティック」で始まって、「帰りたくなったよ」で終わるっていうのは、最初の骨組みとして、決まったことなんです。 |
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“何がなんでも、この曲は入れたい!”と思った曲はどの曲ですか? |
水野 |
僕は、「雪やまぬ夜二人」です。山下が書いた曲の中でもすごく好きな曲で、一度出した時は、カップリングでさらっと出してしまったので、もう一度この曲にヒカリを当てたいなって。 |
吉岡 |
私は、「月とあたしと冷蔵庫」です。これはインディーズの時に出来た曲で、珍しく私とほっちの共作になっているんです。当時関わり始めたディレクターさんに“吉岡も曲作ってみれば”って言われて、私が書き溜めていたノートの2、3行のフレーズをほっちが気に入ってくれて、曲を作ってきてくれたんです。ライブでは3人で歌ったりするので、この曲は入れたかったですね。 |
山下 |
僕は、「残り風」です。この曲は、当時のディレクターさんと歌詞について、だいぶやりあって出来た曲なんですよ。1度ファンクラブイベントのライブでやった時の反応がすごく良かったので、是非入れたいと推した曲です。 |
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振り返ってみて、大きな転機となった曲はどれですか? |
水野 |
グループとしてすごく思い入れが強いのは、「花は桜 君は美し」です。僕らは高校時代に結成したんですけど、受験とかあって休んだ時期があって、20歳くらいの頃に地元のライブハウスでライブを始めたのが本格的なインディーズ活動のスタートだったんです。その頃ライブの冒頭でよくこの曲をやっていたので、自分たちにとっては原点を思いだす曲なんです。 |
山下 |
僕らは色んな段階を踏んでいるので、その時々思い入れの強い曲がありますけど、もし1曲と言われたら…。うーん、やっぱりデビュー曲の「SAKURA」か「コイスルオトメ」か…。 |
吉岡 |
「コイスルオトメ」は大きいよね。この曲は、デビューに向かっている時に出来た曲で、女の子目線で振り切って書いてある曲なんです。今でも覚えているんですけど、曲出し会の場で初めて聴いたんですけど、歌詞の中に“「運命の人よ」「白馬の王子様よ」”っていうのがあって、最初その歌詞を聴いた時に“これ歌えないな”って思ったんです(笑)。 |
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普段は言わない言葉ですからね(笑)。 |
吉岡 |
“これ歌ったら女の子にひかれちゃうんじゃないか”って思ったんですけど、ライブで歌ってみると反応が真逆で、“何で私の気持ちが分かるんですか?”っていう声が多くあったんです。この曲がその後の出来た「気まぐれロマンティック」に繋がっているんです。 |
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アルバムタイトルはどのように決まったんですか? |
水野 |
実は、1stアルバムの時に出てきたアイデアなんですけど、“1stでそんなにふざけていいんだろうか?”ってことになって、その時はボツになったんです。でも“いいアイデアだからいつかベストアルバムを出す時があったら、このタイトルにしよう”と言っていたので、何の迷いもなく使いました(笑)。 |
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今回、新曲と初CD収録曲も収録されています。「今走り出せば」は、代々木ゼミナール新TVCMとしてオンエアされましたが、どういうイメージで作ったんですか? |
山下 |
僕は浪人をしていた時期があったんですけど、“現役感が欲しい”っていうことは言われていたので、前向きな気持ちであったり、純粋な気持ちを思い返して、歌詞にしていきました。 |
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山下さんの曲の中でも特にポップな曲ですよね。 |
山下 |
そうですね。受験勉強って、すごく落ち込むことも多くあるので、そういう気持ちを出来るだけ引っ張り上げられるような曲になればという思いはありました。 |
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「スピリッツ」は、日本プロ野球2010イメージソングですが、この曲は書き下ろしですか? |
水野 |
はい。そうです。僕は野球が大好きなので、かなり野球への思いをぶつけた曲になっています。曲調としては歌謡ロックで、たとえば「ブルーバード」だったり、「残り風」だったり、そのカテゴリーの中でまた新たな曲が出来たと思います。吉岡の歌もかなり高いところまで張っているので、張り詰めた感じが出せたと思います。 |
吉岡 |
実はこの間、巨人戦の始球式をやらせていただいたんです。足はあがったんですけど、ボールはあがらず地面に叩きつけちゃって…。原監督は苦笑いでした(笑)。 |
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「風と未来」はタイトルが印象的ですが、タイトルに込めた思いは? |
山下 |
もともとのタイトルは「羽根と風」だったんです。“名詞なんだけど、意味があるものにしたい”と思いながら歌詞を書き進めていって、「風」っていうのが象徴的になっていて、その後「羽根」より「未来」の方が次に向かっていく感じがあったので、このタイトルにしました。 |
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この曲も「今走り出せば」と同様、ポップな曲ですね。 |
山下 |
そうですね。ただ、シチュエーションがちょっと違います。もともとは太陽の下みたいなイメージがあったんですけど、夜と朝の境というか、西の空を見ればまだ夜空があるんだけど、東の空を見えば太陽が白白と昇っているイメージで曲を作りました。 |
吉岡 |
この曲は結構カロリーを使うんですよ。レコーディングを終えてスタジオから出てきた時にヘロヘロで口内炎が出来てたんです。その興奮が冷めやらぬまま「転調のサビがさ…」って喋ってたら、もう一回そこを噛んじゃって(笑)。 |
山下 |
口内炎見せつけられました(笑)。 |
吉岡 |
ほっちは、実はこういうアップテンポの曲は得意としているんです。テンポはもともと早かったんですけど、さらにちょっと上げて、言葉をすごく詰め込んでいるので、どんどんしゃべる感じが面白いし、サビの部分はリズムの譜割りが結構自由にきくので、どういう風に言葉とメロディーをはめていくかを話し合いながら、歌入れを進めていきました。ライブで映える曲だと思います。 |
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皆さんそれぞれ詞を書かれますが、詞を書く上で大切にしていることを教えてください。 |
水野 |
自分だけの曲にならないように意識しています。どうしても自分の感情を表現したい、自分の伝えたいことを書きたいという一方的な方向に行ってしまいがちになるので、聴いてる人が“主人公”だと思えるような曲を書いていきたいと思っています。 |
吉岡 |
私の場合は、自分が歌うっていうこともあるし、まだ作り始めっていうこともあって、自分の気持ちが結構出てしまうんです。なので、自分の気持ちを出しながら、人の気持ちが入る余地を残せる歌詞を書くように意識しています。 |
山下 |
歌詞でも色んなパターンがあって、いわゆるお話をいただいて書くもの、そうではなくてもっと自由度があるアルバムやカップリング用に書くのものとあるんですけど、どちらもやれる人間でありたいと思います。ちゃんと使い分けてはいくんですけど、そこに堂々としていたいなって。お話をいただいた時でも自分なりの言葉を使って表現していける自分でありたいですね。 |
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歌詞を書く上で欠かせないものや場所などありますか? |
山下 |
最近はオケを録ってる時が一番書きやすいですね。不思議とイメージが湧いてくるんですよ。 |
吉岡 |
こっちはそれでギリギリまで待たされてるけど(笑)。 |
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吉岡さんは、先ほどノートに書き溜めてるって言っていましたが。 |
吉岡 |
最近は歌詞としてちゃんと書こうと意識はしているんですけど、当時は、半分以上日記みたいなものだったので、結構見るに堪えないものもあったと思います(笑)。 |
山下 |
聖恵の感性はすごいなって思うんですよ。前に見せてもらったんですけど、“恐竜に会いたい”とか書いてあって(笑)。俺には書けないです(笑)。 |
吉岡 |
“唐揚げ”が出てきたこともありますから(笑)。私は自由な感じでやらせていただいています。 |
水野 |
僕は、明け方まで悩んで、寝て、起きた時が一番書けますね。冷静になれるので、早朝にできることが多いです。 |
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吉岡さんは、ヴォーカルとして水野さん山下さんが書いてきた歌詞に関して、意見は言われるんですか? |
吉岡 |
今までで一度しか言ったことはないですね。逆に二人は歌に関しても何も言わないんですよ。それぞれが世界観を完璧にして、責任を持ってやっているので、信頼してやれています。 |
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ちなみに、その“一度”っていうのは? |
水野 |
「ノスタルジア」です。この曲は、インディーズで休んでる時期に作った曲で、“こんな未練たらしい曲はイヤだ!”ってはっきり言われました(笑)。その一回きりですね。 |
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一人称を使われる時、「ノスタルジア」では“私”ですが、他の曲では、基本“あたし”“僕”を使われていますよね。その使い分けは? |
山下 |
女性詞っていうのを意識して書くと“あたし”になるんですよ。“私”にするともうちょっと中性感が出てくるというか。あと“あたし”は自己主張が強い感じがしますね。 |
水野 |
「ノスタルジア」で“私”と使っているのは、当時19歳で書いたっていうこともあるし、当時は27、8歳の人が大人に見えていましたからね。でも、これを“あたし”にするとなんか違うんですよね。 |
山下 |
“あたい”にしたら最悪だよね(笑)。 |
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メンバーそれぞれの尊敬できるところを教えていただけますか? |
吉岡 |
リーダーは、バラードもアップテンポな曲も幅広く書いてきてくれるんです。「SAKURA」みたいな曲も書ければ、「じょいふる」みたいな振り切った曲も書けるので、すごい才能だと思います。 |
山下 |
良樹はシングルを書くことが多いんですけど、シングルってバランス感が必要なので、書いていくのは大変な作業だと思うんですよね。“よくやってるな”って感心しています。 |
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では、山下さんについてはいかがですか? |
水野 |
独特の感性を持っているなと思いますね。一度「ホットミルク」という曲で共作をやったんですけど、やっぱりどうしてもメロディーにどういう言葉を乗せるかっていう語感が全然違うんですよ。お互いに潰し合ってしまうので、“やっぱり一緒にやらない方がいいな”って思いました。山下の歌詞には、独特な“匂い”がありますね。 |
吉岡 |
3分の曲を3分で作ったり、曲と自分とが自然に繋がっているんだと思います。ナチュラルな感じが魅力ですね。 |
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では、吉岡さんについてはいかがですか? |
水野 |
吉岡が作る曲は、自由度がすごくあるんですよ。自分たちでは予想のつかない音をとってくるので、それが新鮮だし、そこにいきものがかりの新たな可能性を感じています。 |
山下 |
“歌うま!”っていつも思います。レコーディングでも、音を外さないんですよ。ハモりを録る時なんか、半音上げる、一音下げるっていうところも全部とっちゃうので、“うま!”って思いますね。 |
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それでは、最後に「歌ネット」を見ている人にメッセージをください。 |
水野 |
歌詞を見ながら曲を聴いてくれたら嬉しいので、是非歌詞をチェックしてください。 |
吉岡 |
歌詞だけ読んだ時と歌詞を見ながら曲を聴いた時とは違うと思うので、二度楽しんでもらえたら嬉しいです。 |
山下 |
敢えて狙って難しい漢字を使ったりするので、そういうところもチェックしてもらえたらと嬉しいです。 |