――今年2月にシングル「サブリナ」でデビューして、早くも1stアルバムのリリースとなりますが、今の心境はいかがですか?
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家入:アルバムをリリースすることが決まったのは、本当に最近のことだったので、ビックリしています。楽曲は13歳から作ってきた曲を全部見つめ返しながら、選んでいきました。 |
――今は高校に通いながら音楽活動をされていますが、まだまだ慣れないことも多いですよね?
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家入:そうですね。“色んな人に支えてもらっている”と思います。福岡にいた頃は、大人の人とちゃんと話すことができなくて、“大人ってなんでこんなにズルいのだろう”っていう気持ちが大きかったんです。でも、東京に来て、仕事を通して大人の人と接する中で、“純粋さを持ったままでも、大人になれるんだ”って思えるようになったので、大人になることへの抵抗は、かなり薄らいだと思います。 |
――“じゃあ、こういうインタビューにもだいぶ慣れました? |
家入:大人の人と音楽のことについて“対等”に話せるので色んな発見もあるし、アドバイスもしてもらえるので、すごく世界観が広がったと思います。だから書く曲もちょっとずつ変わってきていると思います。 |
――そんな中、リリースする1stアルバムですが、タイトルの「LEO」には、どんな思いが込められているのですか?
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家入:アルバムの一曲一曲が、私小説なんです。13歳の時、本当の自分を見せられる場所が学校にも家にも無くて、そんな思いを当時から曲にさらけ出していました。そういう意味で、私の曲には嘘偽りがないので、曲が私自身という意味も込めて「LEO」っていうタイトルにしました。あと、“これから歌い続けていくんだ”っていう決意も込めています。 |
――家入さんのルーツを少し辿りたいのですが、小さい頃はどういう音楽を聴いて育ったのですか?
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家入:小さい頃はお家に一人でいることが多かったので、母のCD棚からよく手に取って聴いていたのは、中森明菜さんやビートルズ、レベッカ、あとはプリンセスプリンセスなどでした。 |
家入:13歳の時は、家と学校の両方で上手くいってなくて…。学校も表面的には楽しいんだけど、弱い自分を見せたらみんなに嫌われるから、いつも偽っていたし、女子中学に通っていたので、“行儀よくしてなくちゃいけない”っていうのがあって、すごく苦しかったんです。そんな時に偶然、尾崎豊さんの「15の夜」に出会いました。 |
――どうやって出会ったのですか?
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家入:たまたま母のCD棚にあったので、持ち出して聴いてみたんですけど、本当に涙が止まらなかったんです。“ちゃんと分かってくれる人もいるんだ”って。特に「心のひとつも解りあえない大人達をにらむ」という歌詞がすごく衝撃で、“こういうことを、大人に対して言ってもいいんだ”って思えたし、“私もそういう弱さや苦しさを曲にしたい”って思って曲を書き始めたんです。 |
――そんな運命的な曲との出会いがあって、その後、音楽塾ヴォイスに通われるんですよね。どうして音楽塾ヴォイスを選んだのですか?
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家入:“とにかく行動しよう”と思って、色々と調べたんです。そうしたら、ほとんどの音楽スクールは、“立派な機材があって、有名な先生がいて、メジャーデビューはすぐです”って書いてあったんですが、私が行った音楽塾だけは、“マンションの一室でやっています”“寺小屋です”っていうことしか書いてなくて(笑)。 |
――そうだったんですか(笑)。
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家入:とりあえず行ってみよう”と思って尋ねてみたんです。その音楽塾は、当時から有名なアーティストを輩出していたので、滅多に塾長さんと会う機会はないんですけど、その日は偶然にも会わせていただいたんです。その時、“大人になめられちゃいけない”と思って、塾長さんに“あなたは私に何を教えてくれるんですか?”って言っちゃったんです。 |
――すごい度胸ですね。
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家入:一瞬でその場がシーンとなってしまって…。“さすがに追い返される”って思ったんですけど、じーっと目を見られて、“すぐにデビューはできないし、デビューからが本当のスタートライン。覚悟はある?”って言われたんです。それで私が“やりたいです”って言ったら、“じゃあ一緒にやっていこう”って言われて、ヴォイスに入ることになったんです。 |
――その人が、西尾芳彦さんですね。
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家入:普通の大人だったら絶対に怒っていたと思うので、出会いの印象は強いですね。私は、自分では悪いとは思ってなかったんですけど、それからも西尾さんともずっと敬語の使い方が分からず話していたんです(笑)。今はもちろん敬語ですけど(笑)。すごく厳しい方で、何度も怒られたし、書き直したし、葛藤もしたんですけど、それ以外のところでは、温かく接してくれましたね。 |
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――13歳の頃から曲を書かれていると言っていましたが、アルバムに収録されている曲で、一番最初に出来た曲はどの曲なんですか?
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家入:「Last Stage」と「Say Goodbye」で、14歳の時に作りました。今回、収録するにあたり、歌い直しはしたんですけど、歌詞とメロディーは当時のままになっています。特に「Say Goodbye」は、当時傷つけた人たちの顔が浮かんでくるから、スイッチが入り易い曲で、17歳の私らしく録れたんじゃないかなと思います。 |
――デビュー曲でもある「サブリナ」は、15歳の時に作られた曲ですが、歌詞からは当時、様々な感情を抱えていたことが伺えます。曲が出来たことで何か変化したことはありましたか?
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家入:ありますね。“愛を求めているのは、自分だけじゃないんだ”っていうことに気付けたことがすごく大きくて、“もっとこういう曲を書いてみたい”と思ったのを覚えています。 |
――“自分だけじゃない”って思えたのは、どんな出来事があったんですか? |
家入:当時、私は確かな居場所や愛を求めていて、でも、それって“私だけなんだ”とずっと思っていたんです。そんなある時、クラスで人気の女の子が、私に“寂しい”って打ち明けてくれたんですけど、それが私の中ではすごく衝撃で…。“頑張らなくても居場所があるのに、なんで寂しいの?”って思ったんです。でも、ふとクラス全体を見渡してみたら、“みんなそういう気持ちを抱えているんだ”っていうことに気付いて、それで本当の愛を求める気持ちを架空の女性=サブリナに託して曲を書いたんです。 |
――「Lady Mary」や「Linda」もそうですけど、アルバムでは、そういう具体的な対象が描かれていますよね。
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家入:「サブリナ」は愛を求める気持ちをサブリナという女性に託している曲で、「Lady Mary」は、ある女優さんに捧げた曲。「Linda」は、学校でいくら妨げられても、強く生きていく女の子を私自身がなりきっている。だから、対象は具体的でも、それぞれに意味合いは違っているんです。 |
――映画と読書が趣味ということですが、そういった作品から影響を受けて作ることもあるんですか?
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家入:ありますね。「サブリナ」は、映画「麗しのサブリナ」の影響が少なからずあると思います。愛がテーマの映画だったので、愛を求める私の気持ちとリンクして、曲を作っている時に自然と「サブリナ」って言葉(名前)が降りてきたんだと思います。 |
家入:もちろん私はロックというジャンルでやっていきたいんですけど、音楽塾で洋楽をお手本に勉強してきて、どうしても洋樂ロックには敵わない面もある。だから、だからコード進行は洋楽なんだけど、メロディーに少し演歌というか、“こぶし”みたいなものを乗せることによって、日本人の耳に馴染む、そんなロックを作っていきたいと思うんです。 |
――なるほど。
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家入:それこそ、桑田佳祐さんもそうじゃないかなと思うのですが、コード進行やメロディーを見るとロックなのに、“こぶし”の歌い方をしたり。立場は全く違いますけど、私もそういう部分は、大切にしたいと思いますね。 |
――いわゆる流行りに影響されることはないんですか?
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家入:福岡にいた頃は、取り繕いが上手かったので、最新のものは常にチェックしていました。発信源でいないと次の日からクラスでの順番がどんどん落ちていくから。でも、それを自分の音楽に取り入れたことはないですね。 |
――そういう意味では、福岡にいた時に作った曲と上京して作った曲を比べてみて、変化は感じますか?
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家入:メロディーが優しくなったと思います。「明日また晴れますように」や「ミスター」「キミだけ」は東京に来てから作った曲なんですけど、「Bless You」を書いたことで色んなことに気付けたので、自分の中で縛りがなくなったんです。 |
――具体的には?
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家入:デビューしたての頃は、“なめられちゃいけない”というか、“軽い歌を書くと、軽く見られる”と思っていたので、ヘビーな曲が多かったんです。でも、「Bless You」を書いたことで、過去をさらけ出して、そんな今までの自分と決別できたからこそ、“前を向いて自分が信じる音楽をやろう”って思えたんです。だから、これから幸せな家入レオも少しずつ見せられたらいいですね。 |
――「ミスター」は、家入さんのキュートな一面が垣間見える曲ですね。
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家入:私は気分の落差が激しくて、明るい自分と暗い自分がいて、「ミスター」は明るい自分の時に出来た曲なんです。気分の落差の激しさには自分でも困っているんですけど、でもそれがないと逆に歌えないので、バランスが難しいですね。 |
――2ndシングル「Shine」は、「光」「未来」「永遠」などの言葉が使われていて、内に閉じこもっていたものが一気に解放された印象があります。
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家入:“自分には音楽しかない”って思って東京に来たんですけど、いざ来てみたら、色んなアーティストさんがいて、自分と色んな面で比べてしまったんです。そんな時、福岡の友人が電話で“家入には音楽しか残されていない”ってきっぱり言ってくれて。それで、“人と比べるんじゃなくて、輝くものっていうのは自分の中にある。それに気付いているか、いないかで、日々の生活が変わる”と思うことができたんです。 |
――なるほど。
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家入:外に求めるから苦しくなる。人と比べることで自分の輝きを失くしている、ということに気付けたことが大きかったですね。 |
――本当に悩んでいる人に“頑張れ”は響かないことを経験しているからこそ書けた家入さんなりの応援歌ですね。
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家入:“頑張れ!”って言われて頑張れるんだったら、悩まないのにと思うんです。東京に来て、色んな人に“頑張れ!”って言われて、“何をどう頑張ったらいいんだろう?”って分からなくなったこともあったので、“頑張れ!”っていう言葉は敢えて使いたくなかったんです。応援歌なんだけど応援歌って言ってしまうと安っぽくなるので、だからそういう風に言っていただくと嬉しいですね。 |
――アルバムで、特にこだわった曲はありますか?
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家入:「Linda」はこだわりましたね。文字数もそうだし、完璧に入りこんでいたので、「Linda」という凶暴な女の子になりきった時にシャウトが出てきたり。こだわりつつ楽しみながら作れた曲です。 |
――アルバムは、特にどんな人に聴いてもらいたいですか?
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家入:やっぱり私と同じように笑っていながら、本当は苦しんでいる人は沢山いると思うので、痛みを感じている人に聴いてもらいたいです。あとは、私がどうやって作ったのかは後回しにして、まずまっさらな状態で聴いて欲しいです。そうしたらきっと、“これって私の歌なんじゃないか”って思ってもらえると思うし、「LEO」っていうタイトルも、たとえばサキちゃんが聴いたら、「サキ」っていう一枚になるくらい、その人に寄り添える一枚になっていると思います。 |
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――普段、曲作りはどのようにされているのですか?
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家入:先にメロディーを作るんですけど、メロディーが言葉を選ぶので、本当に合わない時は苦しいんですけど、ハマった時は、凄く嬉しいです。アルバムでも、「Linda」の“全て無駄に終わる強がりでもいい”っていう言葉を見つけた時は、嬉しかったですね。 |
――アルバム「LEO」で特に苦しんだ曲は? |
家入:自分の過去と向き合った「Bless You」も苦しかったし、でも一番は「Linda」ですね。“塗り変えた”とか“うわべだけ”は5文字なんですけど、最初のメロディーは6文字だったんです。でもこれは5文字で切った方が人に届くと思って書き直してみたり、なかなかハマらなかったんです。 |
――逆に早く出来た曲は? |
家入:「Fake Love」です。上京してすぐ宣材資料を作るために、スタッフの人に色んなことを聞かれたんですけど、“初めて会った人に何で自分のことを話さなくちゃいけないの?”って思って、最初は黙っていたんです(笑)。受け入れて欲しい自分と扉を開けたら傷つけられちゃうと思って閉めちゃう自分がいて。その葛藤が恋の駆け引きに似てるんじゃないかと思って、「Fake Love」を書いたんです。“嫌い 嫌い”って牙を剥けている自分さえも抱きしめて欲しい、受け止めてほしい、っていう私なりの思いがあって、“嫌いよ嫌いよも好きのうち”ってある通り、最後は嫌いっていう思いが薄くなっていくっていう意味で“嫌い キライ きらい”って表記したんです。 |
――では、歌詞の面で影響を受けたアーティストは?
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家入:中森明菜さんの曲の詞は、知らず知らずに影響を受けていると思いますね。尾崎豊さんはもちろんですし、あとレベッカも。中森明菜さんの「1/2の神話」に、“半分だけよ 大人の真似”っていう歌詞があるんですけど、すごくないですか!“退屈顔の大人よりも よっぽど私 生きてるつもり”っていう歌詞も、鋭いんですよね。 |
――17歳でその感性はすごいですよ。
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家入:歌詞に関しては色々練習もしてきたんです。たとえば「歌本」を買ってきて、知らないアーティストさんの歌詞を見て、自分なりに解釈して、その曲の3番を書く練習とか。完結している歌詞に続きを書くっていうのは、かなり難しいんですけど、でもそれが力になっているんだと思います。 |
――「15の夜」以外で、衝撃を受けた曲ってありますか?
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家入:それこそ、中森明菜さんの「1/2の神話」や「少女A」、平井堅さんの「LIFE is...」とか。小学2年の時に平井堅さんのライブに行ったことがあったんですけど、もう泣きましたね。“こんなに素敵な歌を歌える人がいるんだ”って。あと、ビートルズの「Let It Be」は、“こんなコードの使い方があるんだ”ってもうビックリしました。 |
――家入さんにとって歌詞を書くことは、どのようなものですか?
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家入:本当に私にはそれしか出来ることがなくて。なんていうか、そんな自分を受け止めてくれる場所は、やっぱりここしか無いんですよね。だから私は歌っていくしかないんです。 |
――では、ご自身が思っている家入レオ“らしさ”とは?
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家入:“痛み”を“痛み”として叫ぶ、っていうことじゃないですかね。どれだけ“重い”って言われても、そこが私だと思うし。もちろんそれだけじゃないですけど、“ありのまま”っていう意味では、そこが家入レオだと思います。 |
――座右の銘は“凛として花一輪”だそうですが、これはどのような意味なんですか?
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家入:頑張っているのに、気付いてもらえない時って誰にでもあると思うんですけど、道端に咲いている花は、踏みつけられても気付いてもらえなくても、凛としている。そんな一輪でも、いつかその存在に気付いてくれる人が現れるから、それまで凛として立っていなさい、っていう意味です。 |
――その他に心に残っている言葉ってありますか?
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家入:“求めなさい そうすれば与えられる”ですかね。本当にそう思うんですよね。周りの人に自分の思いを言うと何か道しるべが出来たりする時もあるんです。言わないと気付いてくれないし、言ったら手を貸してくれる人もいる。“好かれなくちゃいけない”って思って自分の気持をしまっていた時期もあったんですけど、自分の思いはちゃんと口にしていきたいと思っています。 |
――ライブの数も増えてきたので、ライブに対する思いも強くなっているんじゃないですか?
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家入:そうですね。実際にレコーディングするのと、みんなの前で歌うのは全然違いますからね。それこそ、スイッチが入ってライブで歌っている時は気持ちがいいし、“音楽って最高だ!”って思えるので、どんどんそういうスイッチを入れていきたいですね。 |
――ファンとの距離を一番感じられるのもライブですからね。
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家入:ライブは、声援や表情とかステージからはっきり見えるんですよね。本当にキラキラした目で見てくれるので、“あぁ、私って私で良かったんだ!”って思えるんです。普段はネガティブな私でも、ライブの時だけはそう思えるので、もっともっと近い距離で音楽を届けていきたいですね。 |
――今後の目標や挑戦したいことはありますか?
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家入:“家入レオ”っていう音楽を確立していきたいです。そして来年高校を卒業するので、社会人の目標の第一歩として、いずれ武道館ライブをやれたらいいなと思っていますし、現状に満足することなく走っていけたらいいですね。 |
――それでは、最後に「歌ネット」を見ている人にメッセージをください。
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家入:歌詞を確かめる行為っていうのは、結構大変だと思うんです。やっぱりピンとこないと検索はしないと思うし。だから私の歌詞を見に来てくれたことに対して、“ありがとうございます”っていう気持ちです。歌詞を見たことで“こういう言葉を使っているんだ”とか、“こういうニュアンスで表現しているんだ”とか、気付くことも沢山あると思うので、ぜひ歌詞を見て欲しいですし、他のアーティストさんも本当に素晴らしい歌詞を書かれていて勉強になると思うので、これからも色んなものを届けられたらと思っています。 |